日本俳優連合 オフィシャルウェブサイト

Japan Actors Union

日俳連の主張 2022年7月

約10分

俳優たちの前に立ちはだかる諸問題に、日本俳優連合はこのように対応します。

俳優のための団体「日俳連」は、俳優の社会的・経済的な地位の確立と向上のため、

1.「映画」に関する俳優の権利の見直しを求める。
2.芸能界におけるハラスメント等を撲滅しよう。
3.俳優の仕事に係る災害には労災保険の適用をすべきである。
4.物価高の中で実施予定のインボイス制度の実施延期を求める。

の4点について、以下のように協同組合日本俳優連合の姿勢を示します。

1.「映画」に関する俳優の権利の見直しを求める。

俳優が、映画に出演したら、映画の声を二次利用する場合を除いて、実演家の権利が適用されなくなることをご存じでしょうか?映画に出演したら、その時に受け取る出演料だけで、後は、どのように作品が使われても追加報酬は支払われないよう、現行著作権法は規定されているのです。最初に受け取る出演料は、のちの映画の利用に関する全ての報酬が含まれているとは到底考えられない額であることが殆どです。

現行著作権法は、1970年、映画が劇場で上映されることが殆どだった時代に制定され、映画製作会社1社の発意と責任において作られた時代であったことから、映画製作者に権利が集中され、俳優には権利が適用されなくなっているのです。

現在、映画は劇場公開の他、DVDとなって販売され、レンタルされ、配信され、多用途に利用され、劇場収入を上回る利益を挙げています。

制作体制も投資目的を含めた多数社による製作委員会による体制に移行し、興行リスクが分散され、収益予測が制作初期段階で予測できるようになっています。

欧米では、映画の利用の形態に応じて追加報酬が俳優などに支払われる仕組みが実施されています。

日本俳優連合は、衆議院議員会館において、昨年3回の勉強会を実施し、法改正の必要を国会議員、行政、マスコミの皆様に訴えました。今後も、実演家団体の協力を得て運動を続けて参ります。

現行著作権法が出来た当時と現在では、映画の制作環境が全く変わり、利用の用途は飛躍的に拡大しています。我が国の俳優にも、欧米諸国並みに映画の利用形態に応じた報酬が支払われるよう、著作権法を改正することを要望します。

2.芸能界におけるハラスメント等を撲滅しよう。

<俳優などへのハラスメントの実態調査>

実演家は、観客や制作者に気に入ってもらえなければ職業として成立しにくく、映画や舞台の制作現場でも、監督や演出家・スタッフの指導や指示の下で仕事をしています。
2019年7月16日から8月26日にかけて、日本俳優連合は関係団体と共に「フリーランス・芸能関係者へのハラスメント実態アンケート」を行いました。有効回答者数1,218名でしたが、パワーハラスメントを受けたことがある方は、61.6%。セクシュアルハラスメントを受けたことがある方は、36.6%。その他のハラスメントを受けたことがある方は、18.1%(複数回答可)。ハラスメントを受けたことがない方は、13.3%でした。

また、「誰からのハラスメントでしたか?」という問い(複数回答可)には、監督、演出家、スタッフが、37.1%。所属先の上司・先輩・マネージャーが、36.1%。発注者・取引先・クライアントの従業員が、35.8%。発注者・取引先・クライアントの経営者が、34.5%。となっています。同業の先輩やマネージャーまで加害者として挙がっており、特に若い実演家が被害にあっています。

<日本俳優連合の対応>

このアンケートの結果は、日本俳優連合や関係団体のホームページに公表したり、その他、TVニュースの素材としてとり上げられたり、国会で議員による質問に用いられたりしました。

ハラスメントを無くすにはどうすればよいのでしょう。日本俳優連合は、制作現場でハラスメント加害者として複数回名前が挙がった方について、このような情報があると、番組制作会社との会議の場に情報を提供したり、実演家同士の会議の場で情報を共有し、再発の防止に努めてきました。更にハラスメントに関する勉強会を行い、専門家に依頼し、「心の相談窓口」を設けました。相談内容は秘密になっていますが、実際に相談に見えた深刻な悩みを抱えている組合員が存在することが報告されました。

<6名の映画監督の声明>

アンケートで加害者として挙げられた、監督や演出家からは公表結果について特段の動きはありませんでしたが、この度、是枝裕和、諏訪敦彦、岨手由貴子、西川美和、深田晃司、舩橋淳(順不同・敬称略)6名の映画監督が、「私たちは、映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します。」と声明を発表して下さいました。声明には、このように述べられています。

「映画監督は個々の能力や性格に関わらず、他者を演出するという性質上、そこには潜在的な暴力性を孕み、強い権力を背景にした加害を容易に可能にする立場にあることを強く自覚しなくてはなりません。だからこそ、映画監督はその暴力性を常に意識し、俳優やスタッフに対し最大限の配慮をし、抑制しなくてはならず、その地位を濫用し、他者を不当にコントロールすべきではありません。ましてや性加害は断じてあってはならないことです。撮影現場の外においても、スタッフや俳優の人事に携わることのできる立場にある以上、映画監督は利害関係のある相手に対して、自らの権力を自覚することが求められます。ワークショップのような講師と生徒という力関係が生まれる場ではなおさらです」と警鐘を鳴らしています。

日本俳優連合は、3月24日、ツイッターで『映画監督有志の皆様の「私たちは映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します。」という声明に感謝しつつ、日俳連は支持します。』と声明に感謝の意思表示をしました。

<日本映画製作者連盟の対応>

映画業界での性暴力などが問題になっていることを受け、是枝監督など6名で作る「映画監督有志の会」は、ハラスメント防止に向けた提言書を日本映画製作者連盟(映連)に対し提出しました。これについての映連から「性暴力・性加害をはじめとするいかなる暴力や、あらゆるハラスメントについて、決して許されないものであると考えており、これらの行為には、断固として反対の立場をとる」との回答がありました。具体的には、経済産業省と連携して取り組んでいる、「映画の制作現場における働き方の適正化に向けた取り組み」の一環として、暴力やハラスメント対策を検討するとのことでした。

<日本俳優連合の姿勢>

映画の制作現場の適正化に関する取り組みは、主にスタッフの就労に関する検討の場として日本俳優連合は受け止めていましたが、俳優に関するハラスメント問題に関しての検討の場には参加をさせていただきたいと、私共の監督官庁である経産省を通じて申し入れております。

映画制作現場だけでなく芸能界のいたるところで、新たなハラスメントが発生し、問題になっていますが、芸能の世界におけるハラスメント、いじめ、差別等を撲滅するために、日本俳優連合は取り組んで参ります。お悩みの方には専門家のアドバイスを得られるようする他、親身になって協力させていただきます。

3.俳優の仕事に係る災害には労災保険の適用をすべきである。

俳優たちが、仕事場や仕事に向かう途中で事故に遭った場合、勤め人には適用される労働者災害補償保険(労災保険)が、適用され難くなっていることをご存じでしょうか?特に、撮影現場での事故に労災が適用されることは稀になっています。

例えば、俳優は、撮影現場で演技を行い収入を得ます。これは、「仕事」ではありますが「雇用」ではないと言われています。また、俳優が行っているのは「労働」ではなく「事業」であるとも言われています。しかし、「誰かに雇われている」のは確かであり、「演技」をするのは「事業」というより「労働」ではないでしょうか?

出演をする際、出演料を前もって知っている俳優は驚くほど少ないことはご存じでしょう。後で支払われて初めて出演料を知る。そんな役者が「個人事業主」と呼ばれているのは変です。

国際労働機関ILOは、2006年「雇用関係勧告」行い、我が国はこれに加盟しています。

勧告では、雇用を契約等により偽装或いは隠すことにより、労働者が当然受けるべき保護を奪うことに加盟国は対処すべきであると勧告しているのです。

俳優等が労災保険の適用対象者であるかどうかの判定に使われているのが、労働基準法研究会の出した報告による「労働者性の判断基準」であり、1985年と1996年に出されています。

日本俳優連合は、俳優等芸能関係者への労災保険の適用を求め「芸能関連労災問題連絡会」に加入し運動をしてきましたが、この「労働者性の判断基準」が現状に適さないものになっていることから、その見直しを訴えることにいたしました。その理由は、以下の3点です。

Ⅰ.労基法研究会報告は、俳優等の就業の実態を正確に把握しているとは言えません。

Ⅱ.働き方の多様化・インターネットの普及によって、新たな働き方が生まれました。また、勤め人にもリモートワークや兼業が許容され、従来の「労働者」の規範の見直しが求められています。

Ⅲ.我が国は、2006年のILO「雇用関係勧告」に加盟しています。同勧告を誠実に履行し、諸外国の労働政策を参考にしていただきたい。

日本俳優連合は、特別労災の加入団体業務を行っていますが、本来、業務災害には一般労災が適用されるべきであり、それを阻んでいる「労働者性の判断基準」の見直しを求めます。

4.物価高の中で実施予定のインボイス制度の実施延期を求める。

インボイスに関する意見表明

<意見書提出先>

衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、財務大臣、総務大臣、経済産業大臣、内閣官房長官、文部科学大臣。マスコミ各社。

インボイス制度実施の延期を求める意見書

インボイス制度実施の延期を求める意見書

私たちは、インボイス制度の実施延期をお願い致します。
これまで、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば消費税の納税は免除されていました。俳優等実演家はごく一部の者を除き、多くの者がこれに該当します。

ところが、2023年10月よりインボイス制度が実施され、収入に拘わらず登録事業者になれば納税義務が発生することになりました。また、免税事業者のままでいると、買手の仕入れ税額控除に必要なインボイスが発行できないため、買手は、税負担を軽減させるため課税事業者への発注を行うことになり、免税事業者のままでは仕事を失うことになります。

私共俳優は、新型コロナ感染症の影響で仕事を失い、劇場に観客は戻らず、芸能の激しい変化への対応を迫られている不安定な状況にあります。更に、円安による必需品の値上がりで、今後ますます厳しい状況になると思われます。

税の徴収は公正であるべきですが、低収入者の現況がこれ以上悪くなることが予見されるこの制度の実施は、当分の間、見送って下さるようお願い申し上げます。

令和4年7月4日 協同組合日本俳優連合

【更にお願い】

インボイス制度導入の準備段階として、昨年10月から消費税課税事業者の登録が開始されています。買手が、登録事業者であるかどうかをインターネット上で検索できるようにするため、データがネット上に公表されています。

俳優・実演家、小説家、漫画家など、芸名・変名を用い本名を知られたくない、性別が分からないようにしたい、という方がかなりおられます。芸能人の場合、課税事業者か免税事業者かを調べる場合(一般人が興味本位で検索する場合でも)、屋号・芸名(変名)も登録した場合は、本名が必ずわかってしまうシステムになっています。

今はまだ登録者が少ないので、このことに気付いていない方が多いと思いますが、屋号・芸名(変名)のみでの登録もできるよう、今後、修正をして下さるようお願い致します。