
[日本俳優連合 事務局より]
日本国内の声優の皆さまへ
》日俳連公式コメント
協同組合日本俳優連合は、法務省が生成AIによる肖像・声の無断利用について、パブリシティ権、人格権および不正競争防止法等の既存の法的枠組みをどのように適用するかを整理し、具体的な解釈指針の策定を進めていることについてこの前向きな動きを歓迎致します。
本指針案:2026年7月27日に法務省が発表した、肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会 取りまとめ報告書(案)~生成 AI によるパブリシティ権侵害等に関する解釈指針―の資料からは、法務省が生成AIによる肖像や声の無断利用について、パブリシティ権、人格権、不正競争防止法など、現在の法制度をどのように適用できるのかを整理し、具体的な解釈指針の策定を進めていることが分かります。
検討の対象は、非常に幅広いものです。たとえば、俳優の肖像、歌手や声優の声、声優が演じるキャラクターの声を模倣した生成物、性的なディープフェイク、非営利目的で行われる無断利用、芸能事務所と本人との権利関係、さらには、亡くなられた方の肖像や声の利用についても議論されています。
これは、生成AIの時代において、実演家だけでなく、一般の方々の権利と尊厳を守るためにも、極めて重要な取組です。なかでも私たちが注目しているのは、「声」そのものについて、パブリシティ権による経済的利益の保護や、本人の承諾なくみだりに利用されないという人格的利益の保護が認められ得るのかを、正面から検討している点です。
これは、声を仕事とする実演家にとって、大きな前進につながる可能性があります。ただし、現段階では、まだ最終的な結論や新しい法律が示されたわけではありません。今後、実際の事案ごとに、本人を識別できるか、どのような目的や態様で利用されたか、どのような損害が生じたかなどを踏まえて判断されることになると考えられます。
実演家の声は、単なる音声データではなく、本人の人格、尊厳、社会的信用および職業人生を構成する重要な一部です。無断の音声模倣やデジタルレプリカの生成は、経済的損失にとどまらず、本人が行っていない発言や実演を本人によるものと誤認させ、名誉や信頼を深刻に損なうのみならず、実演家やその家族にも精神的ダメージを与えるおそれがあります。
そこで日俳連は、最終的な解釈指針において、少なくとも次の事項が明確に示されることを求めます。
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肖像・声のAI利用に関する、事前かつ具体的な本人同意
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無断生成・公開を行う利用者の責任
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生成AIサービス提供者およびプラットフォームの対応義務・責任
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差止め、削除、再投稿防止、および損害賠償を含む迅速で実効的な救済
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収益目的の有無や著名人・一般人の別にかかわらない人格的利益の保護
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故人の尊厳および遺族の敬愛追慕の情に対する適切な保護
また日俳連は、技術革新そのものを否定するものではありません。本人の同意、透明性、公正な利益還元および責任ある利用を前提として、人の権利と尊厳を尊重する形で生成AIが実装された社会に発展することを望んでいます。
また、最後になりますが、今回の検討会にて構成員として加われた関係者様、並びに関係省庁の皆様方に深く感謝の意を申し上げたく存じます。ありがとうございました。
》 弊連合 池水代表理事コメント
“実演家の声は、単なる音声データではありません。その人の人格、尊厳、社会的信用、そして職業人生を構成する重要な一部です。法務省の検討を歓迎するとともに、最終的な解釈指針が、本人の同意、利用者および事業者の責任、迅速で実効的な救済を明確にし、人の権利と尊厳を守りながら技術革新を発展させる基盤となることを期待します。”
》とりまとめ報告書の重要なポイント。
全体で140ページに及ぶドキュメントのため、事務局で要点を抽出したものが下記の点になります。
1. パブリシティ権
- 保護の対象: パブリシティ権は、個人の氏名、肖像、その他の識別情報が持つ商業的価値を無断利用から保護するものです。
- 声の包含: 人の声は、人物識別情報であり、個人の人格の象徴として機能するため、明確に保護対象に含まれます。
- 侵害の判断基準: 無断利用が専ら肖像や声の有する顧客吸引力の利用を目的とする場合に侵害となります。
- 第1類型(典型的な侵害類型): 肖像や声それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合(例:ブロマイド、ポスター、ボイスメッセージ)。
- 第2類型(典型的な侵害類型): 商品等の差別化を図る目的で肖像や声を商品等に付す場合(例:キャラクター商品、特定の声が再生される目覚まし時計)。
- 第3類型(典型的な侵害類型): 肖像や声を商品等の広告として使用する場合。
2. 肖像等をみだりに利用されない権利
- 法的性質: 人格権に由来する権利であり、肖像等の有する精神的価値を保護するものです。
- 声の保護: 肖像と同様に、人の声もこの権利の下でみだりに利用されないよう保護されます。
- 侵害の判断: 本人の社会的地位、活動内容、利用の目的・態様・必要性などの様々な要素を総合的に考慮して決定されます。
- 受忍限度: 法的判断の核心は、その侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えているか否かという点にあります。
3. 不正競争防止法
- 適用範囲: 周知・著名な個人の肖像や声が「商品等表示」として機能している場合、この法律が適用される可能性があります。
- 混同と冒用: 他人の周知な表示との混同を生じさせる行為や、著名な表示を無断利用(冒用)する行為を規制しています。
- 請求主体: この法律によって営業上の利益を侵害された者は損害賠償や差止請求を行うことができ、これには芸能事務所などの団体も含まれ得ます。
4. 損害賠償および差止請求
- パブリシティ権に対する損害賠償: パブリシティ権侵害の場合、権利者は財産的損害を請求でき、逸失利益は通常、使用料相当額に基づいて算定されます。
- 精神的価値(人格的利益)に対する損害賠償: 肖像等をみだりに利用されない権利の侵害による損害は、原則として精神的苦痛に対する慰謝料の範囲で認められます。
- 差止請求: 権利者はどちらの権利侵害に対しても差止請求を行うことができ、これには物理的な商品の販売停止や、ウェブサイト・SNSからの無断コンテンツの削除が含まれます。
5. 死後の権利
- パブリシティ権: パブリシティ権の相続性については現在も議論が続いており、相続人に承継されるか否かについて統一された見解はありません。
- 人格権: 一般的な人格権は本人の死亡とともに消滅し、相続されないと考えられています。
- 遺族の権利: しかし、故人の肖像や声の無断利用は、遺族の「敬愛追慕の情」を侵害する可能性があり、これが損害賠償請求の根拠となり得ます。
6. 生成AIと想定事例
- AI出力の識別性: 生成AIの出力が元データと完全に同一であることはまれであるため、視覚的・聴覚的な類似性に加え、タイトルやタグなどの付加的な文脈情報を組み合わせて視聴者が本人を識別できるかどうかが侵害判断の鍵となります。
- ディープフェイク・性的コンテンツ: AIを用いて偽の性的画像やわいせつな音源を生成する行為は、本人に強い羞恥心や精神的苦痛を与え、社会生活上受忍すべき限度を超えるものとして人格的利益(肖像権等)の侵害となります。
- 一般人対著名人: 性的画像やわいせつな音源の無断生成は、著名人や声優の場合と同様に、一般人の人格的利益も著しく侵害するものです。
》法務省指針解説ドキュメント(わかりやすい版)
声は実演家皆さんの大切な資産であり、アイデンティティです。ご自身の声にまつわる法律について少しでもご理解の一助になればと考え、本指針をわかりやすく説明をしたドキュメントを作成致しましたので、▶こちらからダウンロードができます。
声がどのような場合に保護されうるのか、AIのカバーやキャラクターの場合、削除、差し止め、損害賠償を検討する際の基本的な考え方、現時点で法律上でグレーな点等をわかりやすく説明しています。
日俳連はこれからも各ステークホルダーへのコミュニケーション活動を強化・継続してまいりますので、ご支援の程、宜しくお願い致します。
日俳連 事務局
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