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居酒屋日俳連 先輩方に、今更聞きにくいこと聞いてきました!

約61分

徳本編集部員
本日はお忙しいところ、ニュース編集部の新企画にお付き合い下さいまして誠にありがとうございます。本日進行を務めます、徳本恭敏(とくもとゆきとし)です。よろしくお願いいたします。

ZOOMによるリモートではありますが、すっかり機会が減ってしまった飲み会のような雰囲気で、ざっくばらんにお話をいただければと考えております。

それでは只今より、「居酒屋日俳連 先輩方に、今更聞きにくいこと聞いてきました!」始めさせていただきます。

お相手は…


梶谷編集部員
梶谷麻衣(かじたにまい)

田尻編集部員
田尻浩章(たじりひろあき)

今村編集部員
今村一誌洋(いまむらかずひろ)

日向編集部員
日向とめ吉(ひむかとめきち)

新田編集部員
新田英人(にったひでと)

徳本編集部員
そして私、徳本恭敏(とくもとゆきとし)が務めさせていただきます。

目次

「居酒屋日俳連」開店!

徳本編集部員
まず初めに、皆様のお名前と、日俳連での役職・担務(たんむ)などをお聞かせいただけますでしょうか。堀之紀(ほりゆきとし)さんから、お願いいたします。

堀之紀さん
堀之紀です。この業界に入ってもう40年近いんですけども、同じ「ゆきとし」という名前を持つ人に初めて会いました。愛着を感じております。
日俳連では常務理事及び外画動画部会委員長を務めさせて頂いております。よろしくお願いいたします。

徳本編集部員
では続きまして、島田敏(しまだびん)さん、よろしくお願いいたします。

島田敏さん
島田敏です。理事を務めさせて頂いております。担務は事業委員会、総務委員会、広報委員会です。また、外画動画部会で堀委員長のもと、副委員長も務めさせて頂いております。どうぞ、よろしくお願いいたします。

徳本編集部員
ありがとうございました、お次は、秋元千賀子(あきもとちかこ)さん、お願いいたします。

秋元千賀子さん
はい、おはようございます。秋元千賀子です。私は常務理事、事業委員長と広報委員会、それから外画動画部会の常任委員をさせて頂いております。皆様よろしくお願いいたします。

徳本編集部員
ありがとうございました。それでは片岡富枝(かたおかとみえ)さん、お願いいたします。

片岡富枝さん
はい。片岡富枝です。常務理事、財務委員長と総務委員会、事業委員会、外画動画部会の常任委員をやっております。よろしくお願いいたします。

徳本編集部員
ありがとうございました。最後に池水通洋(いけみずみちひろ)さん、お願いいたします。

池水通洋さん
どうも、池水通洋です。2008年から専務理事をやらせて頂いてますけども、専務理事の初代が二谷英明(にたにひであき)さんで、二代目は松山政路(まつやませいじ)さん。三代目として、理事長の西田敏行(にしだとしゆき)さんと共に日俳連を牽引していく立場を務めさせて頂いております。また現在は事務局長代行という役割も担っておりますが、どこに行っても最年長となってしまいました。よろしくお願いいたします。

徳本編集部員
どうも皆様、ありがとうございました。他に、平田京子(ひらたきょうこ)さんも広報委員としてご参加下さっています。

平田京子さん
(スマホから見学します!)
徳本編集部員
それではさっそくですね、私から最初の質問をさせて頂こうと思います。

①なぜ事務所は日俳連への登録を勧めるのでしょうか。また日俳連という組織はどんなことをしている組織なのでしょうか。

池水通洋さん
はい。特に声のお仕事を中心にやってる事務所は、日俳連に所属することを勧めると思います。と言うのは、日俳連が声の世界のルール作りをリードしてきたからです。そして今でも、皆さんが持ってるランクは日俳連が管理しています。音声制作会社に配られるランク表には日俳連の組合員と日俳連に登録した新人しか載っておりません。ですから、日俳連に入らないとランク表を見てキャスティングするディレクターの目に名前が入ってこないということになります。

ですので、事務所としては日俳連に登録することを勧めるのは当然だと思います。外画動画の場合には、皆さんランクを持って同じルールで、同じ長さの作品だったらどの制作会社の作品に出ても同じ出演料になる。こういうのができたのは日俳連が独占禁止法の適用除外団体になってるからなんですね。ですから、ランクを決めて、価格協定をして、どの会社に出演しても同じ出演料同じルールが適用されるという事は日俳連だからこそできる。

マネ協さん(日本芸能マネージメント事業者協会)、声事協さん(日本声優事業社協議会)、音声連さん(日本音声製作者連盟)と話し合いますけども、日俳連のルールとして実施することで、独占禁止法違反にはならないですね。音声連さんやマネ協さんが独自にこれを行ったら、価格協定のカルテルで独禁法違反で摘発されてしまうというふうになっております。

池水通洋さん
ご存知のように私たち一人一人の俳優は力がとっても弱いですよね。ですからたくさんの俳優が集まることで、大きな制作会社や放送局と対等に協議ができるように、日俳連には協同組合法による団体交渉権っていうのが法律で与えられています。私たちが局などに交渉を申し入れると、たとえ局側が嫌だと思っても応じなければなりません。その団体交渉権を使って、これまでNHK、民放、音声連等々、団体協約を交わしています。

協約以下の条件で仕事をさせられた場合でも、協約のラインは守られるということが法律で決められています。毎年9月頃にはNHKさんと団体交渉して、次の年の出演条件を決める交渉などを行っています。

後、著作権法の改正の意見書を出したり、今年は4月1日に施行された芸能従事者の特別労災保険の加入団体を日俳連で作ろうと協議中です。民間ではとてもできない厚い補償の特別労災に、日俳連の組合員が安く入れるように計画中です。これから注目をして、日俳連労災に入ってください。そういうことで今いろいろやっておりますけども、大まかに言ってこのようなことをやっております。


徳本編集部員
とても丁寧に教えていただきありがとうございました。それでは二つ目の質問にうつらせて下さい。今のお話を伺ったうえで…

②もし日俳連が無くなったらどのようなことが起こるのでしょうか?

池水通洋さん
例えばですね、日俳連と民放の在京五社の間には民放ランクってのがあったんですよね。今は無くなっておりますけども、昔は3万円から30万円の間でそれぞれ皆ランクを持って出演してました。各局どこへ出ても同じに出演料をもらえるようなシステムが出来上がって、我々にとってはありがたかったんですけども。1999年ですね、フジテレビさんが在京五社のギャラ会を脱退したいって言ってきたんですよ。と言いますのが、ランクを局が管理していましたので独禁法違反になって摘発される恐れがあるということだったんです。なるほど…では従わなきゃいけないか、ということで結局、民放ランクは廃止になったんです。日俳連は各局個別に交渉し、新しい団体協約を結び直して各局別の対応になった際、最低ランクは4万円と決まりました。

これまで皆積み重ねてランクをどんどん上げていってたわけですが(僕は30分で12万円位ついておりました)、民放ランクが終わった事によりドーンと落ちて最低ランク4万円です。ドーンと下がりました。みんな下がっちゃって、一本一本、出演には個別交渉という形になりました。役者個人では力が及びませんし、マネージャーもとても交渉しきれない。ですからみんなひどいギャラになったという事がありました。だから民放は、ギャラの点では1999年を境に、えらく変わったんだと思います。

池水通洋さん
ですから、もし日俳連が無くなるようなことがあって、現場の外画動画でのランクというものも無くなってしまったら、一本ごとの個別交渉ってことになってしまったら。クライアントの言いなりにならざるを得なくなってくるということが考えられます。焼け野原の中で仕事をするというふうな形になってくるので、今の制度を守っていくというのはとっても大事なことだと思ってます。

我々の出演条件は法律で保証されるものでありませんから、それを法律に変えていくという努力もしなきゃいけないな、というふうに思っております。


徳本編集部員
ありがとうございます。今現在では日俳連に入ってらっしゃらない方々がそういう状況になってるんでしょうね。

池水通洋さん
厳しい中でやってるでしょうね。言いなりにならざるを得ないでしょう。

徳本編集部員
ある日俳連外の方が、最低ランクよりも遥かに低い金額でやられていて「日俳連のあなたは使えないよと。アノ人でもこの金額でやってるのに、あなたのその金額では使えないです」と言われたというのを聞いたことがありました。現在はそんな状況でもあるんだなということを踏まえながら色々思ってしまいました。

先に進ませていただきたいと思います。次の質問の方、お願いします。


田尻編集部員
よろしくお願いします。

③私達が納めている「賦課金」は何に使われているのか。教えてください。

片岡富枝さん
はい!片岡です。賦課金というのは、組合費。組合費というのは日俳連の屋台骨であります。このお金で事務局の方々のお給料、家賃や公共料金はもちろんのこと、各委員会、部会、その活動費等々に使われます。申し訳ないですが、皆様のご厚意でいただいております維持会費を含めてもまだ足りないのが現状で、外画動画部会の分配手数料にかなり頼っております。ですので、組合員の増加がこれから必須の課題です。組合費、賦課金で一般管理費が賄えるようになるのが、今の財務としての目標でございます。

田尻編集部員
ありがとうございます。我々をサポートしてくれる日俳連だからこそ、大切なお金、組合費なんですね。

片岡富枝さん
もうちょっと付け加えますと、財務というのは普通は年度として、4月から翌年3月までですが、日俳連では9月から翌年の8月までなんです。8月が決算なので、10月の総代会に向けて、決算書の作成でいろいろ大変な時期になります。その決算書を細かくチェックしまして、総代会で承認をいただいて、そして、経産省に最終的に提出することになっております。

毎月、財務は収支をチェックします。そして決算書ができた時は、員外監事と組合員の中から選ばれた2人の監事、合わせて3人の監事さんが、また更に二重、三重にもチェックをしており、皆様から頂いた賦課金、維持会費それから分配手数料など、正しく、きちんと大切なお金が使われているかということをチェックにチェックを重ねて、事務局会計の小西さん、専務理事の池水さんとも連携し、しっかりと運営しております。


田尻編集部員
ありがとうございます。やましい事は何もない!というのが伝わりました。何よりも片岡さんがガッチリと財布のひもを握っていると聞けば、皆様安心かと思います!

田尻編集部員
もう一つよろしいでしょうか?

④日俳連の成り立ちを教えてください。先輩方から、日俳連が「できるまで」はよく聞くのですが、「できてから」の話は聞いたことがないので、初期の日俳連はどのような活動をしていたのでしょうか、教えてください。

池水通洋さん
それは、歴史的な事でしょうか?

田尻編集部員
先輩方がデモ行進をした!というお話はよく聞くのですが、そこからどういう経緯で日俳連という組織が出来上がっていったのか、具体的なお話しが聞きたいです。

池水通洋さん
分かりました。日俳連は以前「日本放送芸能家協会」という名前でした。鉄腕アトムがシリーズアニメーションとして日本で初めて放送された1963年、昭和38年にその団体が設立されました。

なぜその頃に設立されましたかと言いますと、昭和36年に著作権に関する「ローマ条約」というものが出来ました。その頃の日本の著作権法は明治29年に作った古い著作権法があったのですが、その間に映画が出来て、レコードや放送が始まり、ものすごいメディアの進歩がありました。そのため法律が古くなりすぎてしまい、新しくしなければならない。ということで、昭和37年に政府は「著作権審議会」を作って、旧法を全面改正する方針を出しました。

それを契機に、俳優や音楽家など様々な権利者が、自分の団体を作り権利主張を始めたのです。「日本放送芸能家協会」もその一つで、法改正の場で一生懸命議論をしました。

池水通洋さん
結果として新しい著作権法というのは昭和45年に施行されました。けれども決して満足できるものではありませんでした。実演家は、我々俳優達は映画に関する権利を総て失ってしまいました。

どういう事かというと、第一項に「録音、録画権を実演家に与える」という立派な権利がありました。でも第二項で「実演が映画に固定されたら、権利は適用されなくなる」ということがいきなり書いてあるんです!即、第二項でもって権利が殆ど無くなってしまう、そういう法律構成になってしまって決して満足できるようなものではなかった。それがいまだに続いているというのが現状なんです。ですから我々も映画やアニメーションといったものに出演しても著作物としての権利はないんです。

だけど我々は「結束」でリピート料、ビデオ化使用料、送信可能化権などを勝ち取りました。

池水通洋さん
もともとは生放送一回きりのギャラということでもって出演していたものが、技術の進歩により録音、録画され固定されることによってリピートが可能になった。「何度も使用できるのに、一回きりのギャラはおかしいじゃないか!再放送とビデオ化使用料を払ってくださいよ!」そういう事で、戦い続けて権利を取ってきた。

しかし著作権では法律にまだ何も書いていないのです。1999年頃でしたか、「テレビ番組のビデオ化使用料不払い事件」というのがあって、それが表沙汰になって、結局足掛け13年くらいかかって、ビデオ化使用料を払わせることが出来ました。これは最高裁で認められたことであって、法律と同じ効力を持っているということです。国民の皆様もそれを知っていて、実際そのように世の中動いております。それ以来、ちゃんと使用料を支払ってくれるようになりました。日俳連のルールは「この業界で慣例となった商取引である」と認められたのです。

ただこれから何があるかわからない。なので、これをきちんと法律で裏付けをしなければならないのです。これからも法改正、映画の権利を確立するための運動を続けていかなければならない。こうした活動を続けながら、今に至るということです。


田尻編集部員
ありがとうございました。法改正の時に色々な権利団体が出てきたことは、今考えると恐ろしい時代だったんだなと感じました。

池水通洋さん
そうなんです、ですからマネ協さんなども、その時に出来たんですよ。芸団協さん(日本芸能実演家団体協議会)も。本当に歴史そのものです!詳しいいきさつなどは、ウェブサイトの「日本俳優連合30年史」にも記載がありますので、是非一度目を通してみて下さい。

田尻編集部員
はい!ありがとうございます!しっかり読ませていただきます!

徳本編集部員
次の質問の方、お願いします。

日向編集部員
日向とめ吉です。よろしくお願いします。

⑤テレビ、映画の俳優は、今のところ日俳連に入るメリットが見当たらないのですが、今後何か変化はありますか。

堀之紀さん
今まで池水さんがお話しされてきたことに集約されてるんですけども、確かに民放との交渉が無くなってしまって、映像関係の俳優の皆さんが団体交渉するのはNHKだけなんですよね。外画動画部会が今、出演実務運用表、いわゆる最高裁が「商慣例だ」と言った、これはいわゆるもう声優が出演するための法律ですよと言った、認めた出演実務運用表。我々にとってバイブルみたいなものがあるんですけれども、これはあくまでも日本俳優連合と日本音声製作者連盟との二者間によるローカルルールの取り決めなんですよね。法律的に著作権法で保護されている法律じゃなくて、あくまでもローカルルール。でも長いこと使われてきたローカルルールだから、これは商法、商習慣の慣例上必要と認めるべき商慣習ですよっということを認めたのが最高裁の判決だったんです。
堀之紀さん
要するに、なんでこれができたかっていうと、日俳連に所属している声優の数が多く、日俳連の声優を使わなければアニメも外画の吹き替えも成立しなかったんですよ。その当時。だから音声連、これはあのアニメ裁判の場合は、アニメ制作会社を相手どった裁判だったんですけれどもね、音声連自体もこれに対して別に否応は唱えなかった。

つまり我々日俳連が目指してるものってのは、ルールを法制化して追加して、映像あるいは映画に出てる俳優さんたちの二次使用料もしくは再放送料、そういうものも貰えるようにしよう、ということを目指してるんですよね。

そのためには、活動する人が多ければ多いほど力になっていくんですよね。今、日俳連は国際俳優連合(FIA)という外国の俳優団体と連携して、日本の国内法を改めましょうという運動をしてますけども、これを守っていこうよ改革していこうよっていう思いが強い人がたくさん集まることによって実現していく。簡単に言うと10人居るうちの8人が改革に賛成だって言えば「今のままでは駄目ですよ、今のままでは私達出演しませんよ」と、出演拒否のデモを行う事が、日俳連にはできるんです。

堀之紀さん
何故かって言うと、さっき池水専務が仰ったように、日俳連は協同組合だから、法で与えられた団結権で団体交渉を行い、それが発展してデモという団体行動に繋がっていくんです。協同組合だからこそ「我々の提示する条件以下では出演しませんよ」ってことが言えるんです。これを映像の方達にも使えるようにしていこうというのは我々の今の、理事会の一致した思いなんです。

だから一人でも多くの映像の方たちが日俳連に参加してくれることによって、それが大きな力になっていく。今は目の前にある果物は取れないかもしれないけども、もっともっと先にある果物が取れるようになる。それが日俳連に所属してもらう目的なんです。


日向編集部員
ありがとうございました。非常によくわかりました。そうですね、確かに日俳連に入ってみて声優さんしか居ない感があったのは、実際に映像の方が少ないっていう事だったんですね…

堀之紀さん
僕が日俳連に参加した頃には、映像の方と声優と半々ぐらいだったんですよ。声優は新人登録したら日俳連に入る、という約束の下で新人登録してくるんですよね。その方たちは何年か後に入ってきてくれるわけですよ。だから声優の数はどんどんどんどん増える。毎年何十人かずつ増える。

でも映像の人たちにメリットはあるんですか?って言われると、今、目に見える果物が、メリットがないからなかなかそっちから入ってこない。だからそっちの方はどんどんどんどん、お年を取ってお辞めになる方とか、自然現象的に減ってしまって。声優の人達は新人登録をし、日俳連に入りランクを持つっていうルールの上で入ってきてくれてますから、2,600人ぐらいの日俳連の組合員の内2,000人ちょっとが声優になってしまってるんです。でもこれはね、ホームページやなんか見てくれればわかるんですけども、別に声優だけの活動してる団体じゃないんですよ。日俳連は俳優、芸能実演家の権利をちゃんと守るための法整備をしてきましょう、法律を作りましょうっていうことを主たる活動としている団体ですから。だから映像の方達もぜひ入って来て頂いて一緒に声をあげていただきたいと思っております。


日向編集部員
本当に詳しくありがとうございました。我々若手として今のお話を全く知らない状態でありました。

僕らも舞台に立つこともありますし、役者の方々と今回のような話も出来るようになりますので、非常に助かりました。ありがとうございました。


日向編集部員
質問を続けさせていただきます。

⑥『日本俳優連合』という名ですので、舞台俳優も含まれると思うのですが、舞台に関しての活動はされているのでしょうか。

片岡富枝さん
私は劇団青年座っていうところで舞台活動してます。日俳連の組合員はとっても舞台俳優が多いです。外画動画部会に名を連ねている方達で、かなりの人が舞台をやってらっしゃいます。やっぱり権利の問題とか、その出演料のランクの問題とかありますので外画動画部会に登録してますけれど、本当に民藝も文学座も俳優座も青年座も昴も、もう沢山劇団の人達がいっぱい入っています。

かつては、日俳連でもワークショップっていうかクラブ活動って言ったらおかしいけれど、フリーの舞台俳優さん達でいろんな舞台をやってたんですよ、同好会として。日俳連の組合員による同好会で舞台上演したりしてました。もうお亡くなりになった高城淳一(たかぎじゅんいち)さんがリーダーの同好会があったんですね。沢山の人がそれに参画してました。舞台を年に一度、必ずやってましたね。よく観に行きました。

平田京子さんはそれにも参加し舞台をやってました。それから現在、狂言の会と方言の会が日俳連内にあります。そこで平田京子さんは活動してらっしゃいます。そして今コロナ禍だからなかなか実現はできないんですけど、方言の会にしても狂言の会にしても公演をしたり活動はしています。

片岡富枝さん
やっぱりね、高城さんのように「この指とまれ」って言ってくれる人が現れてくれると。例えば西田敏行さんが外画動画部会員ですけれど、映像、舞台もやってらっしゃる。戸田恵子ちゃんだってそうです、皆舞台も映像もやってる。だから日俳連って一括りなんですよ。その中に皆居るんだけれど、映像舞台部会ってゆうか、そこら辺のパワーが今電池がもう無くなっちゃってる。誰かが、この指とまれの人が現れてくれたら、また日俳連が何か変わってくような気がするんですよね。私たちは夢見てます。頑張ってやっていきたい。そういうふうに思ってます。ね!!誰に向かって言ってんだろ(笑)

日向編集部員
人が増えていき集まって、いつもこう活動してます、私たちこれやってます。という事案を繰り返す事によりルールがまた一つ増え、こうやってましたから出演料などもいつも通りにいただく。という決まり事が出来ていくと良いですよね。ありがとうございました。

徳本編集部員
では次の質問者の方。

梶谷編集部員
お疲れ様です、梶谷麻衣です。よろしくお願いします。

⑦俳優と声優のお仕事の中に、声のお仕事として『ナレーション』があると思うのですが、日俳連内であまりナレーションについてお話を聞く機会がないので、ナレーションに関してなにか活動のようなものがあれば教えていただけますでしょうか?

島田敏さん
はい。

梶谷編集部員
ありがとうございます。では島田さん、お願いいたします。

島田敏さん
お答えする前に、先程から実務運用表の話題が出てますので、そちらに少し触れさせてください。

日俳連は1967年の設立以降、その歴史的経緯を経て、外国作品・動画作品に対しては「基本ランク」「作品の長さ」「目的別利用料率」の3要素により出演料が決定します。

これは、長い年月をかけて「日俳連」「音声連」「マネ協」「声事協」の4団体が、業界発展のために手直ししながら作り上げてきた「外画動画出演実務運用表」の存在があります。この運用表は、2005年の「アニメ裁判」で、最高裁判所が認め、日俳連の完全勝利に漕ぎつけた画期的な判決でした。

島田敏さん
それを前提に梶谷さんの質問に戻りますが、先程ご説明したように、日俳連としては「外画・動画作品」に関しての音声制作関連団体、またNHK・民放連等と団体協約等を進めております。

ご質問の『ナレーション』に関しましては、局制作ですと局ランクで対応しているケースもあるようですが『ナレーション・ゲーム・ボイスオーバー・ラジオドラマ』等々の音声出演に関しましては、各プロダクション・事務所にお任せしているのが現状です。


梶谷編集部員
なるほど。今まできちんと聞いたことがなかったので大変参考になりました。
声の仕事に関してはなんとなく日俳連のルール内というざっくりとした認識でしたが、各プロダクション・事務所に任されている交渉もあることをしっかり自覚することで、避けられるトラブルもあると改めて思いました。ご回答ありがとうございます。

池水通洋さん
ナレーションの値段も、今はすごく荒れてしまっているようだと耳にします。昔、局ランクがあった頃はそんなことはなかったんですが、しばらく経ってナレーションプロダクションみたいなものもできて、そこでは我々とはかなり違う料金形態で仕事をしていることもあるようです。ですのでそこでは、マネージャー同士である程度の取り決めをする、であったり、何かしらのルールがないとどんどん荒れていくんじゃないのかと危惧しています。

梶谷編集部員
確かにそうですね。ナレーションもそうですが、先程島田さんが仰っていたゲームなども、アプリの普及で数多く出演なさっている方もいらっしゃるでしょうから、自分でも気にして、確認しておくことが必要ですね。ありがとうございます。

今村編集部員
では次の質問よろしいでしょうか。おはようございます、今村です。コロナの影響でこうして諸先輩方にお話を聞く機会がめっきり減ってしまったので、今回は本当にいい機会だと思っています、よろしくお願いいたします。今までの質問でもちらほら出てきたとは思うんですが、

⑧日俳連が今後の目標や課題としていることを、改めて具体的に教えていただいてもよろしいでしょうか。

島田敏さん
日俳連の今期、第55期の「目標」が、同時に「課題でもある」と思いますので、その7つを改めてお伝えします。

1.組合員の増加をはかる為、活発に諸事業に取り組む。

2.後進が参加しやすく、共に歩める環境作りを目指す。

3.コロナ禍で行ってきた、組合員にとって有利な支援策を作るための、政策提言を継続する。

4.映画に関する俳優の権利を拡大する為、著作権法の改正に取り組む。

5.実演家への労災保険適用を推進していく。

6.俳優をハラスメント防止法の保護対象とするよう取り組むと同時に、ハラスメント被害に悩む組合員をバックアップする。

7.俳優・実演家のために働く日俳連のイメージを強く打ち出していく。

島田敏さん
以上になりますが、別の視点から2つ課題として上げたいと思います。

1.「映像舞台部会の組合員を増やす事」

4月末現在で、総組合員数2,577人中、映像舞台の組合員数は522人(20.3%)に留まっておりまして、映像舞台の組合員数を増やしていく事が大切と考えております。もしも日俳連として「特別労災加入」の道が臨時総代会で承認されれば、広く映像舞台分野の方々に加入を働きかけ、日俳連の加入促進に繋げられたらと思います。

2.「各部会・各ジェネレーションの組合員の皆様からの意見集約の実現」

時代の流れの中で、俳優・声優を取り巻く環境は大きく変わってきています。各ジェネレーションで、様々なご意見があると思います。またコロナの影響で、役者同士の意見交換もできなくなっています。このような現状は、言うならば足腰の筋肉が細くなってきているのかもしれません。各ジェネレーションの組合員の方々からの意見を集約し、活発な活動をする日俳連であって欲しいと願っています。以上、私なりの課題でした。いかがでしょうか。


今村編集部員
島田さんありがとうございます、とてもわかりやすかったです。私自身は声優活動が多く、周りにいる仲間も声優が多いものですからなんとなく『日俳連=声優の団体』というイメージが強かったんですが、皆さんの話をずっと話を聞いていると『日俳連=実演家のための団体』なんだなということを、改めて実感しました。今のお話を伺って、日俳連に所属していない舞台関係の友人や知人にも、どんな団体か聞かれたときにはきちんと答えられると思います。

島田敏さん
もう一つよろしいでしょうか。ではなぜ日俳連の中で、映像・舞台の方々の人数が減ってきたのかと言うと、いくつか要因があると思うんですね。

まずは、リーマンショックによる芸団協の推進事業であった芸能人年金の廃止。これは、私達弱い立場の実演家は、国民年金を満額かけても十分な金額が貰えないなかで、自分たちがリタイアしたときのために自分たちで年金を積み立てましょう、ということで始まったんですが、リーマンショックで運用がうまく行かず打ち切られてしまった。日俳連としては加入者がとても多かったので、芸団協の総会で「打ち切りではなく、少なくともすでにリタイアした実演家に対しては少額でもいいから終身で支払うべきだ」と戦ったのですが、それも認められませんでした。そのため映像舞台の方々が離れていってしまったという背景があります。

また、映像の方々のランクの底が抜けて、ギャラが低い方に低い方にと行ってしまったのも大きな原因の一つだと思います。

島田敏さん
更に、映像舞台業界全体の人数比があげられます。映像の方々の人数はとても多いわけですが、日俳連に所属しているのは、昔のデータでも5%程度ではないかと言われていて、今はもっと低くなっていると思います。そうすると、たとえ日俳連が正しいことを主張したとしても、業界全体からすれば発言力はとても小さく、過去には「なら日俳連は使わなくていいよ」と一部では言われていたこともあるようで活動しづらくなっていった。それと同時に、所属している方々のキャリアも上がりギャラが高くなり使われなくなるなどもありました。

島田敏さん
これらのことが重なり、映像舞台の会員が減っていったのだと思います。声優たちは先程も話題に上がっていた実務運用表もあって最低ランクが守られていたり、ランク表にも載るなど、権利がしっかりと守られてきたこともあって人数が増えてきましたが、実演家集団としては、全体の会員数の底上げが必要だと考えています。

今村編集部員
では先程も仰っていた4月1日に施行された労災保険への『特別労災加入』は、映像舞台の非組合員の方々に呼びかけるには良いきっかけになるんでしょうか?

片岡富枝さん
そうだと思います。

今村編集部員
どうしても現状、声優の数が多いので、そちらにばっかり目が行ってしまいがちですが、今後の団体の課題としてしっかりと自覚して受け止めていきたいと思います。島田さん、ありがとうございました。

続けて質問させてください。今度は声優の事に関しての質問です。ジュニアの方々が一番知りたい話題だと思うのですが、

⑨ステップランクについて。そもそもステップランクってなんなの?というところから、今のランク制度の仕組みの最新情報を教えて頂けますでしょうか。

堀之紀さん
まずステップランクについてですが、ご存知の通り、日本俳優連合は新人登録というものを認めております。新人登録者は従来「外画・動画」ともに3年間「新人1・新人2・新人3」を経たあと、日本俳優連合の組合員になり最低ランクの15,000円を持つものとして今までずっとやって参りました。ところが、現在は地上波放送用の新録番組というものがほとんどなく、多くはCS・BSとなっています。

新人が起用されるのは圧倒的にCSが多く、新人の場合CS番組は1本、仮に60分としますが、ギャラは8,000円。これが3年経過して最低ランクがつくと、60分のCS番組1本では15,000円に時間割増が1.5、加えて目的別使用料が1.05が掛かってきます。つまり、「15,000×1.5×1.05=23,625円」になって、今まで8,000円だった人が約3倍のギャラになってしまうわけですね。CSの番組では長くシーズンが続いていくものもあるわけですが、その途中でランク保持者になってギャラが上がったことによって、役を降ろされて別の新人に代わってしまうということが多発したんです。

それを受けてマネージャーさん達から「何とかなりませんか?」「とにかく役を降ろされないように緩衝地帯を設けて欲しい」という相談を数多くいただきました。

堀之紀さん
これを受けて考えられたのがステップランクなわけです。つまり「新人制度3年間が終わってから2年間は、ランク10,000円で出演できる。ただし、日本俳優連合の組合員になってください」という制度ができたんですね。

ランク10,000円で出演すると、さっき申し上げた数式に全部当てはめていくと15,750円になって、ギャラの急な値上がりが緩和されるため、役を降ろされることが減るんではないかという考えのもとできたのがステップランクになります。

基本的には我々のルールの中でお仕事をしてもらうために新人登録をしてもらい、ゆくゆくは日本俳優連合へ入ってきて、我々と同じサイドで、みんなでこのルールのもとで働いていきましょうというのが大前提で、このステップランクを設けているんですね。

堀之紀さん
それに付随して、マネージャー陣から「外画でステップランクを設けたのであれば、なんとか動画(アニメ)の方でも新人期間を5年に合わせてもらえませんか」という話が出まして、2020年から動画の新人登録期間も5年に伸ばしました。ただし、動画の「新人4・5」は外画の「ステップ1・2」と同じ扱いですから、日俳連の組合員になっているというのが条件です。ちなみに、ステップランクを使わずに今まで通りすぐにランクを付けるということも全く問題ありません。

今村編集部員
ありがとうございます。私はステップランクを踏んだことがないので、今ひとつ実情やどういう成り立ちでできたのかということが把握できていなかったのですが、今のお話でよく理解できました。後輩から聞かれたときにはしっかりと答えられます、ありがとうございます。

今のお話はステップランクについてでしたが、今度は我々が今使っている『ランク』について聞いてみたいのですが、以前、ランクは一度上げると下げられないと聞きました。実際のところどうなんでしょうか?


堀之紀さん
確かに、以前は一度上げたランクは下げられませんでした。ですから皆さん、ランクを上げる際はかなり慎重になりました。すごく忙しいからランクを上げたいとマネージャーに相談しても「もう少し様子を見ましょう」なんて言われることもよくありました。

現状はランクの上げ下げは自由です。ただし、年1回。毎年1月のランク申請のときにその年のランクを決めるシステムになっています。


今村編集部員
わかりました、ありがとうございます。私を含めそのあたりを全く知らないジュニアの方々、もしくはこれからジュニアになる事務所の新人の方たちの中にも、なんとなく「ランク=怖いもの」という認識を持っている方たちが沢山いると思いますので、相談されたときには正しい情報をお渡ししていきたいと思います。

ランクに関してもう一つ伺いたいのですが、

⑩日俳連の非組合員でもランクシステムを使っている人達がいる、ということを聞いたことがあるのですが、実際に組合員でなくてもランクを使って仕事をできるのですか?
これまでの話を伺っていると、ランク制度は日俳連が守ってきた権利の一つだと思うのですが、それを非組合員が使えることがあるのでしょうか?

堀之紀さん
まだ声事協ができる前ですが、実は『マネ協会員、マネ協所属の声優は全員ランク表に載る』という取り決めだったんです。つまり日俳連に入っていなくても、マネ協に所属している事務所の役者は全員、ランクを付けてランク表に載せていた時期があるんです。このランク表では、日俳連の組合員であるかどうかの見分けはつかないんですね。このランク表というのは音声連の人間しか見られない、つまり音声制作会社の方たちしか見られないんです。我々当事者が自分のランク表を見ることももちろんできませんし、マネージャーも見られません。で、この音声連の方たちには「この人が日俳連かどうか」の見分けはつかないわけです。

ここで日俳連の組合員と非組合員が同じなのはおかしいんじゃないのかという話になったんです。それから日俳連の組合員以外はランク表に載せないという取り決めにしようとしたのが6年ほど前だったと思います。


今村編集部員
割と最近の話なんですね!

堀之紀さん
そう、すごく最近なんですよ。ちょうどステップランクよりも少し前くらい。それでその当時、外画動画部会の委員長として私が折衝にあたったのが東北新社さんから出てきた、音声連の理事長の方とお話しました。「日俳連の組合員以外をランク表に載せなかったら、人数が10分の1くらいになるんじゃない?」なんて言われもしたんですが、ランク表には日俳連の組合員以外載せないと広く喧伝し、各事務所に通達したところ、今まで日俳連に批判的だった事務所も含め続々と日俳連に加入し始めたんですよ。

今でも組合員以外でランク料金を使っている人はいるでしょうが、その人はランク表には載りません。つまり音声制作会社は毎回事務所にギャラの問い合わせを行い、そこからオファーできるかどうか考えなくてはいけない、煩わしい作業が増えてしまうんですね。それと、もう一つ。これは大きな話なんですが、ハリウッドメジャーなんかは音声連に対して「日俳連の組合員以外使うな」とか「組合員だけで配役しろ」と言ってくることがあるらしいと聞いたことがあります。

なぜかと言うと、先程島田さんが仰ったように、実務運用表というのは最高裁でお墨付きをもらった出演条件なわけです。ということは、「組合員=日本俳優連合の役者を使えば、あとから問題が起きない」んですよね。決められたルールの中で仕事をしますから、間違いが起きないんです。つまり彼らから見たら、一番安全な俳優なんですよ。ハリウッドメジャーはそういったことに特に敏感に反応しますから、あとからなにか問題が起きるのは絶対に嫌なわけです。

時々タレントさんが吹き替えをすることがありますが、その時はものすごい膨大な契約書にサインさせられるそうです。ときには数百枚なんて話も聞いたことがあります。ところが日本俳優連合の役者を使うときには、そういったことは一切ありません。実務運用表がある以上、契約書にサインしたと同等の価値があるわけです。


今村編集部員
そこも先程おっしゃっていた「日俳連の組合員は守られている」というところですよね。

堀之紀さん
そう。我々も守られているし、使う側も守られている。ハリウッドメジャーが我々を使う場合でも安心して全部守られているわけです。仮に僕が出演したとして、実務運用表で決められた範囲で使うのであれば、どんな使い方をしてもどこの国で使っても、安全に使えるわけです。

今村編集部員
仰るとおり、これだけのものを日俳連の組合員以外の方が使えるのはおかしな話ですし、賦課金などをきちんと収めて日俳連を盛り上げようとしてくれている人達に、適切に日俳連の権利を使ってもらいたいですよね。

堀之紀さん
厳密に言うと、日俳連の組合員じゃない人がランクの料金で出演しますよと言って、アニメに出たとして。そのアニメを諸外国に持ち出して日本語で流したとしたら、その分のお金を請求する権利があるわけですよ。請求しても法的には構わない。先程も出てたように、実務運用表はあくまでローカルルールで、法律ではありませんから。音声連と日本俳優連合との取り決めですから。

ただこのローカルルールを破ってしまえば裏切り者になってしまいますから、そんなことをする組合員は当然いない。で、マネ協・声事協傘下の声優さんたちに対してはマネ協・声事協が「日俳連の組合員ではありませんが、絶対にそんなことはさせません」と言っているから使ってもらえているのであって、これがフリーであったら全くわからないし、使う側も信用ができない。


今村編集部員
これまでのお話を聞いていると、ランクの成り立ちや仕組みであったりがとても良くわかりました。今後後輩たちには今の話も踏まえて説明していきたいと思います。堀さん、どうもありがとうございました。

徳本編集部員
ありがとうございました。次は私から質問です。お願いします。

⑪ゲーム、アニメ、吹き替えの仕事でギャラの設定が違うのはなぜなのでしょうか。

秋元千賀子さん
先ほどから池水さん、島田さん、堀さんが実務運用表の話を説明していただいてますが、この『ギャラがなぜ違うのか』ということは音声連に加盟してない制作会社と声事協、マネ協に加入してないプロダクションが、かなり増えているという事がこういう状況を作っているのではないかと思うんです。

実務運用表に関しては、アニメーション作品出演規定というのもあり、外国映画日本語吹き替え作品出演規定、それから外画CS放送番組出演に関する特別規定というのを含んで日俳連組合員はこの本運用表の出演条件を下回って出演はしておりません。また音声制作会社及び俳優の所属事務所も本運用表を遵守することに決まっております。

こういうことをきちっと守っていれば、決められたランクというのを提示したものでできると思うのですが、新しい事務所や制作会社が増えています。これから先も、どのくらい増えるのか見当つかないですよね。その辺の所を堀さんの方でカバーして頂ければありがたいです。


堀之紀さん
我々が音声連と実務運用表上で協約を結んでいるアニメ、吹き替え。これは実務運用表でカバーされる仕事なんだよね。でも、ゲームってのはナレーションやCMという部類と一緒で、これは音声連と我々との間に協約が無いものです。高いギャラが貰える場合もあるし、安くなったりもする。ゲームの場合はギャラがランクと関係無くなります。

一時、音声連とゲームランクを作ったんです。自分のアニメーションランクの約2倍というのが基本になりました。ところが新人の本当にまだ日俳連にも入ってこないような子達でも、売れっ子で何十万も貰えるって子達がいたんだよね。

そういう子達が一気に『もう日俳連行きません』『日俳連辞めます』って言い出してしまって、大騒ぎになったことがあるんです。音声連もゲームランクを作ったものの、仕事がそれほど増えたわけじゃないということで、いつしか消滅してしまったんですよ。

今は、そのゲームでお金を貰ってくるのはマネージャーの手腕なんだよね。『ウチは徳本を出すんだったら最低でも20万いただかないと駄目ですよ』って言えるマネージャーと付き合っていけるかどうかという事で、ここはマネージャーの仕事の範疇なのね。

アニメと吹き替えの仕事ってのは自分のランクを計算表に当てはめれば、どこで仕事しても同じお金になるわけです。ところがゲームの場合は徳本さんの事を買ってるマネージャーだったら高く売ってくれるし、相手側に『これしか出せないんだけど』と言われて『ハイわかりましたそれでいいです』って言ってくるマネージャーと組んでしまえばそうなってしまうっていう、そういうシステムなんだよね。

だからね、アニメ吹き替えの仕事と、ゲーム・CM・ナレーションとかっていうのはちょっと分けて考えないとね。我々日俳連が音声連に対して主張している実務運用表を遵守して下さいっていう話とは、ちょっと違う話になってきます。


秋元千賀子さん
私の体験なんですけど、例えばゲーム・アニメの名前を持ってる役をやった時に『秋元さんいくらにしましょうか?』って聞かれたことがあるんです。『皆さんどのくらい希望されてますか?』って言ったら…言わないですよね。だからね『皆さんと同じで結構です』って言ったことがあるんです。マネージャーがいらっしゃるとそういう交渉もしてくださるでしょうけど、その辺のところでも駆け引きみたいのがあって…凄いですよ。これからお若い方はどんどんそういう場面に出くわすと思います。

徳本編集部員
ありがとうございました。
次の質問に移らせていただきます。こちらは、当たり前の事なんですけれども、なぜ当たり前なのかわからない上での質問になってしまうのでお教えいただけますと幸いです。

⑫オーディションは仕事の一環であると思っているのですが、ギャラが支払われないのは何故でしょうか?

秋元千賀子さん
私達が外画動画の仕事を始めた時は、今から40数年前は、一本3,000円で仕事をしていました。
本番を1日に3本掛け持ちをしている時にその場で次から次へと次回の作品を決められていくんです。
それがオーディション代わりになっていたのでギャラ3,000円にプラスα交通費ぐらいでトータル一日3,500円で仕事をした記憶があります。

外画動画に関してはそうですけど、電通・博報堂などの顔出しのCMに関しては100%ギャラは出ました。オーディションであっても。受からない時でもギャラは何%かちゃんと出していただいてました。


片岡富枝さん
世界名作劇場はオーディション行ったら必ず1,000円くれました。ありがたかったよね。それがある時から出なくなりました。受かっても落ちても、交通費がでるとありがたいよね。

堀之紀さん
CMなんかでオーディション本番っていうのはギャラ出るんです。オンエア用として使われなかったとしてもちゃんと出たりします。

徳本編集部員
ありがとうございました。『ギャラ出ないなんて、そんなの当たり前だ』と言われる覚悟で質問したのですが、ちゃんと支払われる場合もあるんですね。当然のように無償でオーディションを受けていることに疑問を持っていたのですが、大変貴重なお話しをありがとうございました。

このあとは、梶谷さんですかね?


梶谷編集部員
はい、よろしくお願いいたします。

現場のことで教えてください、まだ現場の経験がない人には馴染みがないと思うのですが、

⑬登録用紙が何なのかということと、それを記入する目的について教えていただけますでしょうか。

片岡富枝さん
昔は調査票と呼ばれていました。今は改善されましたが、昔はアニメの絵ができていないことが多かったんです。来週放送なのに20%も絵ができていなかったり、中には100%できていなくて、真っ暗な画面でキュー出しで台詞を言った事もありました。当時のベテランの中には「こんなのでいい仕事ができるかよ、帰ろーぜ!」なんて言ってみんなスタジオの外に出て行っちゃったことがあるくらい、絵ができていなかった時代があって。

あるとき、これはいくらなんでも酷すぎるんじゃないかって、役者の間で問題になったんです。そりゃそうですよね。平地で対面で喋っていると思ってお芝居していたのに、蓋を開けたら1階と2階で喋っていたなんてこともあって、そうなると役者からしてみれば、そんな腹づもりないまま演技しているものが放送されてしまうわけで、そういった評価ってすべて役者にきちゃうわけでしょ?「このままじゃ困る!じゃ、調査しましょう」てなったのがそもそものきっかけです。

調査票が始まって、昔の調査票は今と違って下の方に「今日の絵の仕上がり具合は何%」って書く欄があって、そこに毎回記入してたんですね。そして、その番組に出ている人達も名を連ねて提出するってことだったんですけど、あるときからそれは再放送の使用料だったりとか、二次使用料とかいわゆる目的使用料とかを貰うためにも必要になってきて、それと同時くらいに、絵のほうが少しづつ改善されていったんです。

じゃこの調査票は名前を変えて、登録票として使っていこうってなったんです。この登録票の内容は日俳連に送られて、すべてデータ化されています。それが皆さんの二次使用料、再使用料の基本となるものとして使われるようになり、段々と目的が代わっていったんですね。

これは記入することにとても意味があって、データとして残っていれば、いざというときに使えるので、ぜひ皆さんには記入してほしいんです。でもアニメの現場とかだと若い子たちが多くて、そもそも登録票の存在も知らなかったりする。自分の行った現場で知らない子がいたり、登録票が回ってなかったりしたら、その場で説明して渡すようにしています。


梶谷編集部員
ありがとうございます。登録票を出すことで管理がしっかりできるようになるということと、作品をより良いものしていくためにもとても重要なものだということがわかりました。片岡さん、ありがとうございました。

続けて、もう一つ質問です。ちょっとセンシティブな質問なんですが、

⑭例えばパワハラやセクハラを受けて、「事務所には言いづらいから直接日俳連に相談したい」といったような事案が発生した場合、相談は受け付けていただけるのでしょうか?

秋元千賀子さん
私達が仕事を始めたばかりの若い頃は、パワハラ・セクハラは日常茶飯事で、そんなの気にしてたら切りがないくらい。本当にすごいパワハラ・セクハラでした。富枝さんや私達もそういう被害が沢山ありましたけれども、精神的に強かったんですね、きっと(笑)

片岡富枝さん
被害与えてたかもしれないわよ(笑)

秋元千賀子さん
逆にね(笑)私達もパワハラいっぱいあったかもしれないね。

で、それではやっぱり大変なことになると思って、2019年の8月に「ハラスメント、心のケア相談」という名目で、髙山直子先生をお迎えしてハラスメントセミナーを開催いたしました。非常にデリケートな問題ですから、なかなか先輩や事務所にも言いづらい。相談ができる窓口があったら、絶対にいいだろうなって。それは常に思っております。池水専務と私が窓口になって、二人だけでは対処しきれませんので、総代会委員の方の力も借りて、対応していきたいと思っております。皆さんにご協力いただきながら「ハラスメント、心のケア相談」というものを継続していかなくてはいけないと強く思っておりますので、また進捗状況などは改めてお話させていただきたいと思います。皆様、ご協力よろしくお願いいたします。


池水通洋さん
なかなか相談しづらいのか相談者は少ないようですが、相談できる会社とも契約しております。

ハラスメントセミナーをしていただいた髙山直子先生ですが、アメリカでも研究されていたようで、ハラスメント問題はとても複雑で、色々なハラスメントがあって素人ではなかなかケアするのが難しい。だから専門家に聞いていただいて、もちろん個人の秘密を守るような形でやっていかないと、二次的な被害にあってもいけませんから、専門家にお願いするのがベストと思っています。相談があれば、専門家への仲立ちをするなど力になれることがなにかあると思います。今後とも秋元さんたちとも相談して、継続できる形を作っていきたいと思っています。


梶谷編集部員
ありがとうございます。編集部メンバー内では、「現場以外でも、例えば事務所内でも、見えないところでそうしたことがあるかもしれない」という話もありました。日俳連でこういうシステムができました、ということを、会報誌などで組合員に対してお知らせいただくほか、改めて事務所に説明をして、事務所からも役者に伝えていただけるようにできたら、事務所側の意識も変わってくるのではないでしょうか。皆で協力して、多くの方に広めていけたら良いと思いました。

徳本編集部員
ありがとうございます。それでは最後の質問になります。新田さん、お願いします。

新田編集部員
今日は皆様長時間ありがとうございます。去年から続くこのコロナ禍。特に若い方たちは少人数ずつの収録となり、現場で先輩たちになかなか会えない。先輩方の仕事を見る事ができる機会がとても少ないという話をよく聞きます。

日俳連も確認番号の発行などで協力した「文化芸術活動の継続支援事業」など、社会的な話は報道やウェブサイトをご覧いただくとして、ここでは今日現場でお仕事をしていく上で、

⑮コロナ禍において日俳連が行っている事、業界全体と協力して行っている取り組みなどありましたら教えてください。

新田編集部員
まだまだ不安定な状況が続くかと思われます。これからの指針になるようなお話をいただきたいと思います。

島田敏さん
「外画動画部会名義」でのお願い文を作った者としてご報告させて頂きます。

昨年秋の「外画動画部会」で、部会員から「コロナ感染の不安の声」が、切実な問題として上がりました。それまでも、「音声連」さんはじめ、各スタジオ、感染予防に努めて頂いておりました。が、改めて「日俳連」からの要望を出させて戴きました。

密室のスタジオでは、感染リスクが他の業種とは比べ物にならないくらい高いと思われます。その後は、リスク回避に更なるご努力を「音声連各社」並びに「スタジオ経営各社」に頂いております。特にスタジオのスタッフの皆様には感染予防対策に務めて下さり出演者一同、心から感謝申し上げます。また、出演者の皆様にも、様々な制約がある中ご協力を頂いております。業界内の感染がほとんど出ていない事も、スタッフ・キャストの皆様のお陰と感謝致します。コロナ収束にはまだまだ時間がかかるかと思いますが、一日も早いコロナ収束と以前と同じ様な収録形態が戻る事を願っております。


堀之紀さん
新人の方たちが、去年からのコロナ騒動でほとんど仕事が出来てなくて、売り込みにも行けない、マネージャーもスタジオに行く事を禁止されている。音声連、声事協、マネ協のマネージャー達から、去年と同じ、つまり「新人1は新人1、新人2は新人2、そのまま今年度スライドさせてもらえませんでしょうか?」と、そういう提案を受けまして、外画動画部会で検討した結果、「去年と今年度は同じようにスライドして活動できる」というようにしております。

ですので新人の皆さんに会ったときには、「焦らなくていいから、こういう時だからこそ、ちゃんと勉強する時間なんだと思ってしっかり勉強して実力をつけて、現場に出た時には堂々と仕事をやってほしい!」ということを機会がありましたらお伝えください。

外画動画部会は皆さんの味方ですから、もしこの状況が続いて来年もう一度スライドさせてほしい、ということになりましたら、部会でちゃんと検討して、妥当であればもう一年スライドさせる事もやぶさかではないと僕は思っております。焦らずに、とにかくまず罹患しないこと。そういうことを先輩としてお伝えしていただければと思います。よろしくお願いします。


池水通洋さん
音声連が各スタジオに声がけをして、シールドを立てるなどの感染対策を講じてくれているんですけど、「あるスタジオがまだマイクとマイクの間にシールドなどの対策を講じていないので、演者が怖がっている」そういった連絡がありまして。音声連さんへ連絡をして、状況を調べてくださいということをお願いしました。

そういった連絡を密に取って、改善してもらうようなことをした方がいいと思いますので、感染対策が不十分なスタジオがもしありましたらば、事務局に電話等で情報を寄せていただければありがたいです。


新田編集部員
島田さん、堀さん、池水さん、ありがとうございました。我々も安心して、後輩たちに「大丈夫だよ」と伝える事ができます。コロナ禍を無駄な期間にするのではなく、私たちに与えられた有益な時間、機会にしていきましょう。

徳本編集部員
さて、だいぶお時間も深くなって参りました。たくさんの質問にお答え頂いてありがとうございます。

最後に、皆様から一言ずつ今日の感想を頂きたいのですがよろしいですか?では、堀さんからお願いします。


堀之紀さん
はい。色々質問を受けたり答えたりしている中でね、自分でも記憶が曖昧だったり、忘れかけていたりした事を、もう一度改めて再確認できた。この時間は非常に、僕にとってもよかったな、役にたったなと思います。

今日皆さんから聞いた話や忘れかけていた事、思い出した事を、もう一度精査して、今後さらなる業界の発展の為に考えていこうと思いました。今日はありがとうございました。


島田敏さん
どうもおつかれさまでした。先ほども申し上げました「日俳連の足腰が弱くなっている」んじゃないかな、という状況の中で、今回若手の方々に向けた企画が立ち上がってくれた事をうれしく思います。そしてできれば、沢山の皆さん、特に若い方々に、この記事に目を通して頂ける事を、心から願っております。本日はどうもありがとうございました。おつかれさまでした。

秋元千賀子さん
皆さん、今日はおつかれさまでした。本当に色々なことを、ちょっと忘れかけていたような事も、また紐解いていきながら勉強していかなきゃいけない、たくさん課題ができたな、と思います。この記事を目にしてくださっている、これからの日俳連を支える若い方々に、大変期待を致しております。どうもありがとうございました。

片岡富枝さん
なんだか本当に久々に、楽しかったです。そして懐かしかったし、忘れていたことも思い出し。皆さんと同じです。若い方々に向けた企画が立ち上がったことも嬉しいです。今後ともどうぞ、よろしくお願いいたします。

池水通洋さん
どうも今日はありがとうございました。僕はね、いつのまにか最年長になってしまいましたけれども、こういった企画が立ち上がり、この記事に興味を持って見てくれる方々がいらして、そろそろ世代交代が出来るんじゃないだろうかと期待しております。今後ともどうか、皆さんよろしくお願いいたします。

徳本編集部員
こちらこそよろしくお願いいたします。ありがとうございました。では、お仕事の都合により日向さんは退室されてしまっておりますが、若手サイドの感想も一言ずつお願いします。

梶谷編集部員
お疲れ様です。皆さま、改めまして本日はありがとうございました。質問項目のなかには、答えにくいものもいくつかあったと思います。それでも丁寧に分かりやすく、細かいところまで教えてくださってとても嬉しかったですし、大変勉強になりました。ありがとうございました。

田尻編集部員
本日は長い時間、どうもありがとうございました。今回のこの企画に参加して、自分でもまだ理解していなかったこと、知らなかったことを沢山教えて頂きました。

一番為になった、嬉しかった事が、今我々も苦しいですけど、若い後輩たち、去年からもしくは今年から、養成所を卒業して活動し始めた方々が一番不安になっている所だと思います。そういった方々に「日俳連やマネージャーさん、業界の方々は、君たちの為にこういった活動をしているよ」とちゃんと教えてあげられる情報・知識がついたというのが嬉しかったです。ありがとうございました。


今村編集部員
本日は長い時間ありがとうございました。今、田尻さんもおっしゃって下さったんですけど、こういったやり取りが会報として見て、あぁそうなんだとわかるのも、今はやはり組合員の方ばかりです。そうではなくて、事務所に入ったばかりの若い方々だったりとか、これから日俳連に加入をするしないの岐路に立っている方々に、今日出てきたこと等をしっかり説明していくのは、ある意味僕らの義務ですし、それがこれからの自分たちの為にもなっていくことなんだな、という事を改めて確認できました。本当に自分にとって、とてもいい時間でした。皆さんありがとうございました。

新田編集部員
皆様、本日はありがとうございました。元々の企画は日向さんと、本当に居酒屋をお借りして、ベテランの皆さんから話を聞きたい若い世代と一緒に実際に飲みながら話そう!という、コロナ以前の企画でした。形を変えて、今日このような形で実現できた事で、やっぱり実際に飲みながらお話を聞きたいな、企画のイメージもよりリアルになったな、と思っております。

世代を超えて話をする事ができる「リアル居酒屋日俳連」を実現できるように、まずはコロナ禍にくじけず、一歩ずつ前に進んで行きたいと考えております。都合により前半のみギリギリまでご参加下さいました、平田京子さん、日向さんも今日はありがとうございました。編集後記(日俳連ニュース新企画)で是非ご感想をお聞かせください。ご参加下さいました皆様、本日はありがとうございました。


徳本編集部員
ありがとうございます。本日はこれにて、「居酒屋日俳連」閉店でございます。
非常に有意義な時間となりました。我々は知らないことが多すぎる、そしてそれを聞くことをしていなかったんだな、とわかりました。

今は先輩方から、本物の居酒屋ではお話し頂くことができませんが、今回のようにオンライン飲み会を活用して、僕らや、僕らより若い世代の方々に、お話をお聞かせいただけますと幸いです。また企画させて下さい。今後とも何卒よろしくお願いいたします。

一同:本日は誠にありがとうございました!
またのご来店、心よりお待ちいたしております!


<企画・文責ニュース編集部>